虚木零児です。
またぞろ、日本スゴイ系番組が濫造されて意識高い感じの人達がお怒りのようです。日本にご不満のある人が拡散しておられたのでお見かけいたしました。さして興味がなかったので発言は辿れなくなってしまったのですが、趣旨としては下記のような感じでございました。
「母国を過剰に褒めちぎることでしか自分の価値を認められない惰弱な人間が増えているのは嘆くべきことだ」
……はて、仰られていることがよくわかりませんな……
実際の所、過去にお見かけした日本スゴイ系番組を批判する人たちの言い分には理を感じることはありました。曰く「それは世界的に見たら大したことではなく、スゴイことの証左にはならない」だとか、「確かに称賛に値する功績ではあるが、大きく貢献したのは別の人である」だとか。それはもう仰る通りでございまして、評価者の設定したボーダーが低すぎるのは、その評価に対する信頼に繋がりますし、評価されるべき人にスポットライトが当たらないのは評価の存在意義が問われる問題です。それはわかる。
しかし、今回の意識が高い感じの方が仰られているのは有り体に言えば「自分の国を持ち上げることで気持ちよくなってるんだろ？ キメェ」な訳です。私めにしてみれば、自分の母国が持ち上げられただけで、自分の価値があがるなんて到底思えません。例えば「日本の侘び寂びが海外の人たちに受けている」という話が本当にあったとして、そこから「俺は海外の人たちから人気者になれる」には繋がりません。なぜなら、私自身が侘び寂びを理解出来ない不心得者だからであります。むしろ、日本人の癖に侘び寂びもわからない分、相対的に価値が下がっていると言っても過言ではない。
にも関わらず「日本を褒めることで自分自身の『承認されたい』という欲求を満たしているんだ」と難癖つけてくる、その思考回路は一体どうなっているのでしょうか。
今回は、オタク用語の「認知の歪み」で照らしてみると一条の光明が見えてきます。彼ら自身が自分の所属組織への称賛を見ることで自己承認欲求を満たしていると同時に、自分の所属組織を喧伝することで称賛を集めようとしているが故に、日本スゴイ系の番組も同様の意図であると誤認してしまうという推測です。それならば、日本を美化することは（日本に所属している）自分の評価を高めることとイコールで結ばれているでしょうし、日本を美化して喧伝することで巡り巡って自分の評価を高めようとしていると読んでしまうのも無理からぬこと。なのかも知れません。
そう考えると去年の秋頃、意識高い感じの人が「日本スゴイ番組の副作用」だと騒いでいたのも同じロジックだったんだろうなと懐かしい気持ちになります。その時は海外に留学した人が書いた「日本人だからちやほやされるだろう」と思っていたら全くそんなことはなくてショックを受けたという記事を見ての反応だった訳ですが。
なるほど、世界中から日本が羨望の眼差しで見られていると誤解していたがために、日本人であるだけで価値があると誤認してしまっていたというのはわからないでもない。その結果、見向きもされなかったのは大きなショックだったというのも、まあ、なんとなくですがわかる。
ですが、その羨望、あるいはスゴいという評価が何に向けられているのか。そして、自分はそのスゴい点にどう関与しているのかについて事前に深く考えていれば、こんな残念な経験を積まなかったのではないかとも思えます。日本はスゴくとも、国民の俺は別にスゴくない。むしろ、「スゴい日本人を期待していただろうにこんな奴でゴメンな」と額をこすりつけてもいいぐらいではないでしょうか。
個人的にはこの人の経験は「日本スゴイ番組」が原因というよりは、「凄い組織に所属している俺スゲー」が直接的な要因に思えます。日本製のアニメコンテンツが一定の評価を集めているのが事実だったとしても、それを自身の人気や評価に繋げられるかは自分自身の能力次第であることが、この方の経験からも読み取れます。結局、最後に物をいうのは自分自身の能力、あるいはスゴさなのです。
にも関わらず「日本スゴイ番組の副作用」すなわち大したことのない国をスゴいと誤認させたことの影響だと言っちゃう意識高い感じの人の残念さ。留学した御本人がこの経験を経て人を見た目、イメージ、所属で判断しなくなったと仰られているというのに、一体いつまで所属で判断するつもりなのでしょう。
だいたい、「最近の日本スゴイ番組は目に余る」という文脈で一年前の記事を引用するのもアレだし、そもそも留学当時の思い出話を最近の話に結びつけるのもアレ。もう少し意識を高く持っていただきたいなと思わせる次第であります。これ、中段にあるTHEビッグ・オーやあずまんが大王が当時流行していたアニメだったとすると、少なめに見積もっても十年は前の話ですからね。お前の中の最近のレンジどうなってんだって話ですよ。
最後になりましたが、意識高い系は承認を得るために過剰なまでに他人にアピールする傾向があるという見解を述べる人の記事を置いておきますね。
