虚木零児の仮説置き場

虚木零児が他人の行動に仮説を立てるブログ

今、プロダクトの話はしてないだろ!!

虚木零児です。

こんなにもHEART CLOSETのことを槍玉に挙げることについては正直、申し訳ないなぁと思っております。

ただ、ただですよ。急にここまで書いてきたことの前提が崩れてしまうような情報が流れ込んできたんですよ。これはもう書くしかないよなという話でして。

今回はこのTweetに対する話をします。

@ShiitakeoLenti1 氏作成

この人が書いていることが現実に即しているかといえば、僕の目線ではとてもそうは思えない部分はあります。具体的にはツイフェミと言われる人たちの過失が記載されていないし、赤吹き出しの人の服装に対する評価が隠されていると感じます。

例えば、過失の部分についてはこういった指摘があります。

正直、上記の指摘についてはご尤もで、本当に経緯を何も知らない人からしてみれば、穏当な話しかしていない赤吹き出しの人が不安がって、青吹き出しの人が強気なことを不思議に思うんじゃないかとは思います。いや、まあ、すべての発言に問題がないかと言うとちょっとアレですが。表現の自由を訴える男性が二回続いたぐらいで不安になるのは流石にどうかと思います。法則性や規則性にこだわり過ぎるのは日常生活を送る上では邪魔になることが多いですからね。

ただ、実際の炎上劇としては、指摘されているような差別的な発言が多数見受けられており、見守ってきた身としてはツイフェミとされる人々がHEART CLOSET社長は敵だという判断をしたのだろうということは容易に想像がつきます。人間は敵と認定した相手と味方と認定した相手とで平然と評価を変えるということをします。たとえ同じ行動をしていたとしても。ですので、味方と思っていた間は許せていた行為も敵と思えば憎しみを覚えてしまうのでしょうし、敵がしたなら許せないエスカレートした言動に味方と思えば見逃してきたのでしょう。その発想が根底にあればこそ、社長もまたこちらを敵として認識しているだろうから、訴えるとしたなら彼女が味方する青色吹き出しではなく我々赤い吹き出しを狙い撃ちするだろうと考えるのも納得出来ないこともない。

いや、人を捕まえて「お前も敵か」というのは、あんまり健全な精神状態ではないと思いますが、精神科医でもない人間なので断言は避けておきます。ただ、やってることが「余桃の罪」の君主と同じなんで、絶対に権力とか握ってほしくないですね。上司とか絶対に向いてない。

kotobank.jp

ただ、今回はこの図が現実を正しく表している、表していないの話はこれ以上しません。おそらくツイフェミに近しい立場にある人が、自分たちの視点ではこういう見えているのだ。というのを図示したのだと受け止めれば良く、少なくとも彼ら・彼女らの中ではこの図は正しい。ということにします。僕たちとは見えているものが違う、根底に流れている価値観が違うという可能性もわずかながらにありますからね。

……いや、赤吹き出しが日和ってるってことは、同じものを見ている可能性が高いし、おおよそ、自分たちの行いに何らかの落ち度があるということに気づいていると思いますが……まあいいんですよ。今回は。

さて、あの図が正しいとした場合、一つ特徴的なことがありますよね。赤い吹き出しの人って一度としてHEART CLOSETの製品に言及していないんですよね。たわわの問題で、という訳ですらなく、青い吹き出しの人たちによる悪口雑言に晒されている瞬間ですら服装の出来については言及していない。アパレルブランド、しかも、製品の方針について一定の法則性を持つことを明言しているブランドが問題になっているのに、原因が製品ではなくて社長の言説の話しかしていない。青い吹き出しが商品、あるいはそれの着用者を捕まえて「エロい」って評価してるのとは対照的です。

これってつまり、プロダクトがエロい、エロくないの話ではなく、社長が思うように動いてないからキレてるって話なんじゃないか。っていう。

例えば下の図みたいに状況を整理した時、っていう話なんですよね。

  製品群 個人評価 世間的評価
スタート (a) (A) (α)
社長発言以降 (b) (B) (β)
たわわ事件以降 (c) (C) (γ)

この人の言い分を信じるなら、

  • (α)=エロい。主に男性からの声。これを受けてブランドから抗議的な声明が出る
  • (β)=エロくない。社長がそう言うんだから間違いない
  • (γ)=エロい。社長がたわわを認めるとはそういうこと

という話になります。

本当に?

ブランドに対する評価って基本的には製品群が最初にあって、それらを利用した個人が評価して、それらが共通認知として世間に知れ渡るという流れだと思うんですよ。

例えば登山用品の場合だと、(a)の位置に頑丈なザイルがあって、それを使った人が(A)として「信頼できる商品」という評価を下して、それらが集まることで(α)として「良質なブランドだ」という評価が下される。というのが自然な流れですよね。

京都アニメーションだって、ufotableだって、制作したアニメーション作品が良質だという評価があって、それらが共通認識となったことで今日のプロダクションとしての評価があるわけです。片一方は思いっきり脱税したんで到底褒められたもんじゃないが、それはおいておくとして。

つまり逆算すれば、(γ)に「エロい」とか「男性からの性被害を誘発する」のであれば、(C)も(c)も似たような評判のハズなんですよね。それぞれの製品が「エロ」くて、人々の性的欲求を刺激して、各個人が印象として「エロい」とかの感想をいだき、そういう人が集まってくることでブランドの認識が「なんかエロい服をいっぱい作ってる会社」ということになるのが自然な流れなんですよ。

考えてみればわかると思うんですが、(a)として「人の体重に耐えられないザイル」があって、それを使った人(A)が「あそこのザイルは頼りない」って言っているのに、世間(α)からは「立派なブランドだ」と評価されているって不自然じゃないですか。最低でも「あそこのブランドのクライミングロープはダメ」になるべき*1ですよね。

であるのに、今回の件はそうなってはいません。下記の記事でも引用されているのですが、プロダクトが変質したから以前のような評価が下せなくなりましたよという話ではなく、社長の言動が変化したからプロダクトの評価を変えます、あるいは、変わりましたという話なんですね。

anond.hatelabo.jp

ハートクローゼットの服に対して残念だと言っているツイートをいくつも読んだが「これまでのハートクローゼットの服は黒澤代表男性性的眼差し糾弾してくれたか安心して着れたのに、黒澤が方針転換してしまったので汚物になってしまった二度と着ることはできない」という趣旨の物が主流であった。つまり黒澤さんに対する豪快な誤解が根底にある。

「二度と着ることはできない」という感想を抱くのは勝手ですが、それが果たして妥当なものかという話には疑問が残ります。あの社長のブランドの服だと思うと腸が煮えくり返って着る気になれないと言う人も居るでしょう。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。昔からありますよね、そういうの。

ただ、そういうラインで話してる人ばかりではないじゃないですか。

前回の記事において、HEART CLOSETというブランドを着用する女性に対する男性からの視線についての言及を二名分引用しました。どちらも「男性から性的な視線を向けられる」ことは防げないどころか、「性被害にまで発展する」であろうといった主旨でしたよね。

ここで思い出してほしいんですけど、今回の経緯の発端として2019年に「HEART CLOSETを着用した女性の画像に男性から性的な評価が下される」事件があったはずですよね。この時点では社長がそういった評価に対しての態度を明らかにしていなかったから、悪意ある人間によって性的なものと判断されたのだとしましょう。まあ、これはつまり社長にあれこれ言われるまでもなく、男性は評価を下せるということなのですが、その点については目を瞑ります。そこの異常性は前回すでにお話しましたからね。

ともあれ、そういう出来事があって、社長から「やめてください」という主旨の声明が出されて顧客が「安心した」という建付けになっています。今回のたわわ騒動とは、この「やめてください」という訴えが揺らいでいるのではないか、と客が不安になっている。という話なんだと。図の作者は訴えている訳です。

その割には図の中には声明によって「性的な評価が下されなくなった」とも「下されにくくなった」とも書かれていないんですよね。

これが(a)≠(b)≠(c)で、(a)=(c)ですよっていう話ならわかるんですよ。リアル乳袋の汚名を着せられていた時期の製品群(a)が本当に人々の劣情を呼び起こすような代物で、現在のラインナップ(c)も当時を彷彿とさせるのだ。その狭間の(b)とは一見すると同じブランドとは思えないかも知れない。とでも言うのならわかります。

ところがおそらく、実際は(a)≒(b)≒(c)なんですよ。(a)を見て「エロい」って感想を抱くような人は(b)でも(c)でも「エロス」を感じるでしょうし、本来なら(b)では「性的視線を向けられないだろう」と感じていた人は(c)でも「性的視線を向けられることはないだろう」と感じると思うんですよ。

つまり、これってプロダクトの話やそのプロダクトを受けての評価の話ですらなくて、何故かブランドに対する印象だけを変えようとしているって話なんですよね。何が売られているか、とか、商品を購入した人がどういう表現を実現したいのか、どういう評価を下しているかなんて微塵も興味がない。

通常であれば、性的な視線から受ける恐怖は性的な視線が解消されるか、自身の内側にある恐怖心を克服するしかありません。例えば、犬にじゃれつかれて恐怖を覚える人がいて、犬の飼い主が叱りつけたとしましょう。重要なのは叱りつけたことじゃくて、しゅんとした犬がじゃれつかなくなるから、ですよね。だから、犬が苦手な人が恐怖しなくて済むんですよ。飼い主が叱りつけたことは直接の原因じゃない。極端な話、叱りつけなくても犬がじゃれつかなくなればOKですし、逆に犬が気にせずじゃれついてくるのなら、叱りつけても解決はしていません。むしろ、飼い主が注意したにも関わらず、気にせずじゃれてくる犬はコントロールに不安があると言わざるを得ず、なんら安心に繋がりませんよね。

今回の話も同様で、2019年声明発表以前は性的な視線を示唆するようなリプライが大量にありましたが、社長の声明によって無くなった、あるいは、減少していました。があって、初めて安心につながると思うんですよね。それが、たわわに関する社長の発言が出たことで、再び増加に転じました。という話があって、初めて社長、この責任はどう取るんですか! という話になる。商品の機能はともかく、商品に対する評価・風潮が視線を恐れる女性にとって悪い方に転がったぞ! って訳ですよね。

ただ、なぜか、そういう話にもなってないんですよね、不思議なことに。不安な気持ちになって泣いてる人も居るのに! とは言うけども、収まっていた被害が再開して辛いですとは言っていない。もしかすると、言っている人はいるのかも知れないが、図には書かれていません。

道理が合わないじゃあ、ありませんか。

そもそもの話をすれば、HEART CLOSETだろうが、そうじゃなかろうが、どんな服を着ていようが相手を何の合意もなく、性的な視線を向けるのはおかしい! という話なんじゃないの? と思います。それはブランドの社長が何を言ったであるとか、世間一般の評価がどうであるとかは無関係です。例えばあるブランドの社長が「ウチの服を着るようなのはエッチな目で見られたい人ばっかりですよ」なんて言ったら、そのブランドの服着てる人には性的な視線を向けてもオッケーってことになるんですか。当人とは全く無関係な、せいぜいが服を作って売っただけの頭のおかしな社長の言動で? たった、そのブランドの服を買って身につけたばっかりに?

それ、本気で言ってます?

なんていうか「アイツ、生意気だからシメよう」ぐらいのメンタリティを持ち続けたばかりか、一企業に対してそれを仕掛けるというのはマジで人間って成長しないよなあということを漠然と感じさせてくれます。盗んだバイクで走り出す側に感情移入できるのは、バイクを持つこともできない人だけですよ。自分のバイクを盗んで走り出されるのを喜ぶ人がどれだけいるのかっていう話です。

社長がクソだから、あそこの製品は買わないって皆さん、スティーブ・ジョブズが聖人だ、俺たちの理解者だとか思ってiPhoneを買っていたんですかね? クールで洗練されたインタフェースのビジュアルと便利な機能によるユーザーエクスペリエンスに惹かれた訳じゃなくて?*2

マジ?

*1:ロープ以外はすごい良質なのかも知れない

*2:僕はiPhoneがクールで便利だと思ったことはないが