虚木零児の仮説置き場

虚木零児が他人の行動に仮説を立てるブログ

チャンネル登録とはなにか?

虚木零児です。

家にいることが多く、動く気力がないときなどにYouTubeをよく見るのですが、広告でやたらとメンバーシップを勧められるようになりました。「応援の仕方はチャンネル登録だけじゃない」そうです。

うるせえ。利用方法について説教されるほど落ちぶれたつもりはねえ。

ところでこのチャンネル登録、English(US)では「Subscribe」と言います。これは日本語に直すと、賛同する、署名するなどの意味があります。他にも、新聞などを購読するという文書にも使われるようです。

英語圏発祥のサービスであることを考えると、これはつまり「定期的に配信される(であろう)動画を継続して視聴する」という意思を持つ人がすることだったのでしょう。これは新聞の定期購読者数などと同じように、その媒体の売上を推測するのには役に立つと思います。ただ、実際の読者数とは若干の乖離がありそうな気もします。

ただまあ、継続して視聴したいという人が多いことは素晴らしく、そういうチャンネルがすごいというのは事実だけど、それは結果であって、自分のチャンネルをすごく見せる為に登録者数を増やそうとする風潮には異を唱えたい。

……ということは一旦、置いておいて、今回の記事は日本語におけるチャンネルとはなにか。購読ではなく、チャンネル登録と訳された理由とは何なのか。という話をしたいと思います。

これ、実は「ギガが減る」的な言葉じゃないかと思うわけです。

Channelの辞書的な意味は下記のとおりです。

channelとは

水路、可航水路、運河、(陸地と島との間などの広い)海峡、(水を流す)水管、導管、(道路の)溝、側溝、暗渠(あんきよ)、(ラジオ・テレビなどの)チャンネル

水路とチャンネルが同じ単語? となってしまいますが、これは順を追って見ていけば理解することができるかと思います。

そもそも、ラジオやテレビなどでいうチャンネルというのは、厳密には通信の経路のことを指します。テレビやラジオは周波数を分割して多重化しているので、物理的には周波数帯域と考えることができます。

無線は周波数帯を各無線事業者に帯域を割り当てることで、それぞれの干渉を防いで独立した経路として使用できるように整備されております*1。これにより、論理的にはそれぞれの放送局から各端末に経路が張り巡らされ、それこそある水面から別の水面に水を流す水路に近い働きをします。水路と(ラジオ・テレビなどの)チャンネルは「ある地点からある地点までを結び、中を通るものを到達させる」という意味では同じものなんですね。

さて。テレビやラジオなどは一つの機械で複数の周波数を受信することができます。装置側でどの周波数を受信するかを選択できるようになっているからです。

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テレビ放送のイメージ

上図にテレビ放送の簡易的なイメージを示しました。

三角のアンテナが出ているのが放送局。そこから発信された特定周波数帯の電波を王の字のアンテナ装置が受信し、データを処理してからディスプレイに表示することで我々は番組を見ることができるようになります。

チャンネルというのは、各放送局から伸びている色のついた線のことを指します。今までは赤いチャンネルを受信していたけど、ここからは青いチャンネルを受信しよう。という行為をチャンネル変更と呼びます。本来は。

多分、そういう意識を持ってチャンネルを変更している人は少ないと思います。「あ、そろそろW杯が始まる時間だ。チャンネル変えなきゃ」と考える人が多いでしょう。

大抵の場合、それぞれの放送局は異なるコンテンツを放映している*2ので、赤から青に受信周波数を変更すれば、テレビに映るコンテンツは変化します。赤いチャンネルを使っている局はニュース番組を放送しているが、青いチャンネルを使っている局はバラエティ番組を放送している。ということは心当たりがあるかと思います。

つまり、ユーザは「チャンネル」を変更すると、コンテンツが切り替わる。という経験を積むことになります。結果、ユーザはチャンネルを特定のコンテンツ群、あるいは放送局を指す言葉として認識するようになりました。しかも、大抵の場合放送局とコンテンツ群は1:1、放送局と無線チャンネルも1:1なので不都合は生じません*3

もちろん、これはテレビが無線の周波数帯などをユーザに意識させない構造になっていることが大きいと思います。無線リモコンには数字ボタンが用意されており、それらとチャンネルを結びつけることで、特定のボタンを押せば該当のチャンネルに受信帯域を変更することができるようになりました。今も通用するのかはわかりませんが、1チャンとか7chといった、リモコンの数字+chという呼び方もありました。これはテレビ側で都道府県ごとにプリセットが用意されていた為で、それを使用していれば違う装置のユーザとも話が合うから共通のワードとして通用したんですね。

YouTubeのいうチャンネルというのは原義的な経路としてではなく、放送局ないしコンテンツ群といった意味合いで使われていることがわかるかと思います。それを自分の定期購読チャンネルのリストに記載するから「チャンネル登録」といったところでしょう。購読には「買って読む」という意味がある*4ので、そちらではなくチャンネル登録というワードを使ったのはなかなかの英断だとは思います。チャンネルは経路のこと、ということに目を瞑れば。

ただ、これ逆に言えば、テレビのどの番号にどの放送局を割り当てるかに近い話だと思うんですよね。いつでも見れるようにチャンネル登録している人の多寡がそのチャンネルの価値を表しているかというと微妙なところだし、収益などの制度上仕方ないとはいえ登録が応援になるというのもおかしな話だと思うんですよね。ましてや、それを収益の制度を握っているYoutube運営から言われるのは無性にイラっとするというか、なんというか。

チャンネル登録が応援になる、ならんはお前らの胸三寸で決まるやろがい!

……恨み言しか出てこないのでそろそろ終わります。

*1:一昔前にソフトバンクが恨みがましく言ってたやつ

*2:ここは放映権の問題なので地方局によっては同じ番組を放映していることも十分ありうる

*3:無線関係に密接に携わらない限り

*4:新聞の購読者数は定期購読者数の定期が取れたもの