虚木零児の仮説置き場

虚木零児が他人の行動に仮説を立てるブログ

アプリの名前なんて伝われば何でもいいだろ

虚木零児です。

TwitterがXになってからあと数ヶ月で1年。個人的にはイーロン・マスクの目指すスーパーアプリに近づいた様にも、ユーザーにとって便利なアプリに近づいたとも思いませんが、こういうのはなるようにしかならないですよね。

僕は精神異常者を中心にフォローしているのですが、飽きもせずにスーパーでもないアプリに張り付いてる人々を眺めていると、ソーシャルなネットワーキングのサービスを享受しているな、という実感がわきます。生きるってこういうコト。

この前も「最近のアプリは名前に一般名詞を採用していてケシカラン」という話題で盛り上がっていましたね。何がXだ! 何がTeamsだ!

うーん、どうやら、僕はトラックに轢かれてしまっていたらしい*1

パーソナルコンピュータのOSシェアって長らくWindowsが抑えてると思うのんですけど、実は変わってしまったんですかね。それとも、windowって単語が日本語で言う所の窓を指すって知らない人が多くなったのかしら。

僕の予想では皆さん「複数の窓」ってオペレーティングシステム上で「言葉*2」ってソフトで報告文書を書いたり、「優秀*3」ってソフトで財務計算をし、「展望*4」ってソフトでメールをやり取りしたり、スケジュールを管理したりという経験があると思うんですよね。

正直、ソフトウェアやサービスの名前がオリジナリティ溢れる固有名詞ばっかりだった時代なんかありましたかね。

Excel以前の表計算といえば「1-2-3*5」ですが、1-2-3が果たしてオリジナリティあふれる言葉か? っていう話なんですよ。

かつて一斉を風靡したSkypeはsky peer-to-peer からの造語? ですけど、その前に流行っていたMessengerは単なる「伝令」とか「使者」です。今も人気のdiscordにいたっては「不和」とか「不協和音」でしょう。iPhoneユーザーは「safari」って聞いてブラウザの名前としか思わないのでしょうか。大昔にけものフレンズが流行したとき、ジャパリパークのAリパークはどこから来たと思っていたんでしょうか?

冒頭でネタにしたスーパーアプリで言えば、日本ではメッセージングアプリとして根強いシェアを誇ってるlineって「線」って意味の単語と同じですが、それは? っていう。その点、世界のシェアが高いメッセージアプリに「whatsapp」というものがあるらしいですが、こちらは「what's up(挨拶や調子を伺う決まり文句)」と「app」の合成だから、まあギリギリオリジナリティがある。かも知れない*6

まあ、Amazonなんかは南米の世界最大のアマゾン川由来ってことで、ギリギリ固有名詞かな……? って感じですけども。でもそれだってアマゾンって単語1つで一意に定まる訳ではまったくない。一時期流行った言い回しで多くのオタクが「アマゾンへ飛んだ」りしてましたが、あれも通販サイトを閲覧に行くのではなくて、探検隊よろしく南米の秘境に謎を追い求めるという意味合いですよね。果たして、アマゾン川流域が未だに前人未到の秘境扱いできるレベルなのかは一切わかりませんが。

Xが気に入らない、イーロン・マスクのやろうとしてることが評価できない。みたいな話は一定理解出来ます。昔のほうが良かったな、みたいな部分はありますし、別にこんな機能無くてもいいだろ、と思ってるものもあります。スペースとかね。興味もないのにフォローしてる人が聞いてる程度の理由で、限られたアプリ空間の上側を占拠してるの素直に邪魔なんですよね。あれでツバ飛ばしたり、浴びたりを楽しんでる人には悪いですが。

だからって、イーロン・マスクのやることなすこと否定するために、ウソの話を撒き散らすのもそれはちょっと違うんじゃないか。って話ですよ。

僕もTwitterのほうが馴染みがあるし、意識しないとXとは言えません。ただ、Twitterという名前にそこまで思い入れがある訳でもない。Twitter というサービスに、虚木というアカウントで構築した、タイムラインや人間関係自体は結構気に入っているけれども、サービスがTwitterと呼ばれようが、Xと呼ばれようがどうでも良い。電子付箋帳とかになっても別に気しないと思う。

正直多くの人も同じだと思う。Misskeyだ、Blue-Skyだと居場所を求めて大騒ぎしてましたよね。移住を成功させた人もいることでしょう。僕は移住してもいないし、だいたいこっちにいるんだけども。

ところが、Twitterであることにこだわりがある、意味を見出している人たちもいるんですよ。そういう一部の人達がぶち上げたのが冒頭の「最近のアプリは名前に一般名詞を採用していてケシカラン!」ってワケです。

まあでも、彼らは同じ口でTwitterは「小鳥のさえずり」という意味の英単語から取られた名前で、その通り、自由な言論空間を願ってつけられた名前だったのに! って喚くんですよね。だからこそ、Xなんて「ありふれた一般詞をアプリ名に使うなんて!」ってワケですが……Twitterって英単語がありませんかね。

www.etymonline.com

動揺や興奮の状態を指す名詞として「twitter」という言葉が使われるようになったのは1670年代のことです。

etymonline Twitterの意味、語源より

正直、2006年のサービス開始時点で、Twitterって単語が英語社会でどの程度使用されていたのかは知りたくもないし、興味もない訳ですが、別にTwitter自体も固有名詞ではなく、当人らは造語と認識していても、実際はこうして用例が残っている程度には使われていた単語なんですよ。Xよりは使用頻度が低い、日本での知名度が低いという話は理解できるものの、それだけがTwitterが特別優れたネーミングってことにはならないし、イーロン・マスクが極めて異常なセンスな訳でもありません。

……いや、自社のサービスに名前をつける理由が「自分の好きなアルファベット」だけだとしたら異常ですが。理由を抜きにすれば、既存の単語からあやかって名前をつけるってのは40年近く前から行われ続けてきたことであり、それをさも近年の傾向であるかのように語るのは何なんだとは思っています。

連日、記事更新したいずれにも共通していることとして、歴史――っていうほど大層なものじゃないですが、過去とか経緯とかに対する意識があまりに希薄が過ぎるんじゃないかと思うんですよね。一般的な単語をアプリの名前にするなんてここ数年で始まったことではない。Aplle社を「果物の会社」って表現した映画があったと思うんですけどあれは何でしたっけ。そういう辺りのことを意識出来てれば、アプリケーションソフトはいずれもオリジナリティあふれる名前がついている! みたいな勘違いは起きないと思うんですけどね。

ネーミングを変えていいことあったか? みたいな話もそうなんですけど、莫迦にできれば何でもいい。みたいなノリなのか、自分自身の近視眼的な立場からものを言う人が増えている気がする。立場や見方を変えれば違ったりしないか? みたいな心配をしているように見えない。

正直、僕自身、Xって名前が成功しているとは思いませんが、旧来的価値観からの脱却するアピールであったり、旧態依然とした体制を変えていくぞという決意表明であったりとかの意図があるだろうから、いいことがないだけじゃ決断を覆す理由にはなり得ないんじゃないかなって。

逆にTwitterに戻すとイーロン・マスクにとって何かいいことがあるって言うのなら、戻す可能性もゼロじゃないでしょうけど、すでに使ってる人が気持ちよくなるだけだったら大したメリットじゃないよなぁ。と、僕なんぞは思ってしまうワケです。

……まあ、この文章自体も多面的なものを見ているとは言い難いわけで、もしかすると、人間が年を取るってそういうことなのかも知れないなあ、と、急に思いついてしまう訳ですが。それはそれで。

*1:異世界転生の古典的隠喩

*2:Word

*3:Excel

*4:Outlook

*5:Lotus 1-2-3。今はもうないらしい

*6:日本語発音だとどっちもワッツアップで同じになる気がしますが