虚木零児の仮説置き場

虚木零児が他人の行動に仮説を立てるブログ

莫迦は馬鹿やるからバカ

虚木零児です。

また莫迦が馬鹿やったようですね。で、くら寿司に訴えられたそうです。心温まるとてもいい話ですね。

そうするとまたぞろ労働ゴロが大騒ぎする訳です。

「低賃金で労働力を使い潰しておいて、訴訟で追い詰めるとは何事だ」

労働者を守るよりも莫迦を守ったほうが人気が出る時代なんでしょうか。

莫迦を雇った責任の所在

まずなんであの莫迦くら寿司の厨房にいたかという話です。アルバイトだったというお話なので、誰かが雇い入れたんだということは明らかですよね。この雇用は是か非かで言えば、非な訳であります。こんな莫迦を社内に取り込むのは明らかに失敗であり、避けられた事態であることははっきりしております。その点については間違いなくくら寿司が悪い。

そして、時給が低い以上、ある程度の莫迦が混入することは仕方ないというのは、労働ゴロすらも認める周知の事実であります*1。ある程度の時給を提示すればまともな人も戻ってきてくれて、莫迦の割合を薄めてくれる想定なのでしょう。高い時給に釣られて莫迦が増えてくる可能性を一顧だにしていないのは気になるところですが、お金の計算が出来るぐらいまともな人を呼び戻すにはそうするしかありません。

莫迦が馬鹿やった責任の所在

莫迦が馬鹿するのは、誰がなんと言おうと莫迦の責任であります。周囲に唆された、流行に乗っかったなど、莫迦側の言い分はあると思いますが、やってはいけないことをやったのが自分なら、それをわざわざ世間に知らしめたのも己です。拡散したのは別人だと言うのは尤もですが、面白いものを皆で共有するサービスに投稿しておいて「拡散されたくない」はサービスの否定であり、であるならば、なぜそんなソーシャルサービスに投稿してしまったのかという疑問に答える必要があるでしょう。そして、おそらくその答えは明白です。莫迦だから知らなかったです。

残念ながら、ゴロたちが言うように低賃金であることが就業規則の無視、あるいは食品衛生法を遵守しなくていい理由にはならないでしょう。同じ給与体系でも多くの人が莫迦をせずにおとなしく就労してる人たちは何なのだという話になります。そして、それが理由になるのであれば、給与に不満を持つ省庁の職員が統計をごまかしても、経営者が会社のお金をマネーロンダリングして自分の口座に転がり込ませても責め立てることはできなくなる筈です。ゴロがなぜこんな筋の悪い戦いを挑むかといえば、思うに、この不満を覚えていい給与ラインを取り仕切ってシノギとするつもりなのであります。ひどい話ですね。

そもそも、自身の雇用契約に不満があるからエンドユーザーに被害をもたらす、業績を低下させるように手を打つということが労働者の権利であるかという話であります。そんな労働者を見た雇用者がどんな手を打つかは火を見るより明らかだと思いますが、煽っている諸兄はそのあたり如何お考えなのでしょうか。

莫迦が馬鹿やった被害の行先

それでも労働者を守ろうという精神は尊いものだと思っているのかも知れません。本当に彼らが守ろうとしているのは労働者なのだろうかという疑念があります。

今回のくら寿司の衛生管理に対する疑問は消費者の心理に影響を与え、今後の業績にダメージを与えるかも知れません。店舗が特定されればその店舗は閉店を余儀なくされることもあるでしょう*2。その時、今まで働いていた職場をいきなり失った労働者はどこへ行けばいいのでしょうか?

他のくら寿司の店舗がちょうどスタッフが不足していればそこに転がり込むことが出来るかも知れません。そうでなければ職を探す必要が出てくる訳です。そもそも、新しい店舗がスタッフにとって優良な環境であるという保証はありません*3「労働者を守るのだ」と息巻くのであれば、残された労働者たちの心理にも寄り添って然るべきではないでしょうか。何らかの理由から職場を離れることもできずにいた人達が唐突に放り出されるという状況を差し置いても、莫迦を優先的に助ける理由は何なのかという話です。

今回、くら寿司が損害の賠償を行うというのは見せしめだけではなく、やられっぱなしで黙っているつもりはないという意思表示としては十分でしょう。そのアピール先は部外者である我々だけではなく、自身を就業場所として選んだ労働者にも向かっていることだと思います。

それぞれの妥当性

くら寿司のアルバイトは賃金と労働のバランスが適切であったか」「アルバイト職員の動画公開に対して、賠償を請求することの是非」「今回の公開動画に対する賠償額が妥当か否か」といったそれぞれの論点は独立して考えるべきでしょう。

もし仮に職務に対して十分な報酬が支払われていなかったとしても、それを理由にして職務を疎かにしてよいかという部分は別の問題であります。そうではなく、監督者がいなかったのが問題なのだという話であれば、監視者の必要な労働者としての扱いになり、監視者なしでも動ける労働者に対して報酬面が劣るのも無理からぬことだという話になります。監視者なしで仕事もできない労働者が、監視者不要の労働者との待遇の差を嘆いて、労務を疎かにすることの是非に話がシフトします。

賠償の請求是非についても同様であり、今回の件が過失であるならば同情の余地があるかも知れません。しかしながら「クビも覚悟」だと題して動画を上げているならば、それは果たして過失と言えるのでしょうか。これが店に対して少なからずダメージを与えることを自覚した上での行為なのではないでしょうか。そもそも、この動画による風評の被害のみならず、労働につかずに動画を撮っていたことの是非もあります。これらが企業にとって損害を与える行為でありながら、賠償請求すらも許されないのだとすれば、その被害がより弱い立場の物言えぬ労働者に降りかかるのではないでしょうか。

本件、そう簡単な話でしょうか。

ヒトが人間でなくなる時代

昨今の労働環境は三流労働者にとっては過酷なものになりつつあります。事業の収益を上げるために労働者がこなすべきノルマがしっかりと規定され、余計な雑談をしている暇や動画の撮影をしている暇などありはしないのです。その扱いが正当か否かにかかわらず、その速度で走らなければ企業が収益を挙げられない。我々が社会から人間として扱われる為のハードルは年々上がっていき、ついていけない人間は脱落せざるを得なくなっています*4

かつて、電通に勤める女性が過労から自殺したという痛ましい事件がありましたが、電通がヒトに対して課しているハードルは一人の女性が心身を喪失してもなお越えられないほどに大きく成りつつある。それが果たして電通だけの問題なのでしょうか。くら寿司も同様に、アルバイト労働者の能力を大きく上回る重荷を背負わせていた可能性は否定できないでしょう。ゴロたちの言い分がすべて間違っているとは言いません。

しかしながら、本業の最中に娯楽に興じる事ができる人間を守ることに血道を上げる人たちは一体何者なのかということは一度考えたほうがいいと思います。

*1:でなきゃ、冒頭の発言はあり得ない

*2:実際、過去の個人店などは閉店した例もあります

*3:少なくとも地理的には以前より悪化する可能性は高いでしょう

*4:僕がこのブログで自身を人間扱いしない理由の一つです