虚木零児です。
社会はエンタメに満ちています。
母親が我が子に授乳する心温まるシーンを問題視する人が出てきて愉快な騒ぎになりましたね。何事かと思えば、授乳はAVで分類が出来るほどポピュラーなプレイ・性的嗜好であり、人の耳目を集める為の手法なのだそうです。
……AVの見過ぎで現実との区別がつかなくなってはいませんか？
理論とは到底言えないぶっ飛んだ論法は以前からですが、ここにきて本音を隠すことすらしなくなったなという印象があります。このテの妄言はこれまでであれば、誰かしらが被害にあったという体で問題提起をしていた印象でした。例えば、コンビニの成人コーナーについても、目にした女性が不快感を覚えるという理由があり、だから目にしないで済むようにしたいという要望が出てきていました。要望の正当性はともかくとして、建前としては被害を受けているから改善をしろというスタンスでした*1。
ところが、今回の件に関して言えばスタートからして「授乳シーンは微笑ましいワンカットではないのか？」に対して「認識が甘い」などと大見得を切ってからの、授乳プレイに代表されるように授乳行為は卑猥なものとして認識されうるし、それを目当てに集まってくる人がいる。という理論展開をしています。普段なら、被害者感情をむき出しにして泣き出すのですが、涙が出ている様子もありません。流石に、授乳シーンを目にして泣いてしまったとは言えなかったのでしょうか。
駅乃みちかの事件の辺りからすでに指摘されていたことではありますが、彼ら・彼女らの被害意識の殆どは「そのコンテンツを見て喜ぶヤツが居る」ことに起因します。今回の件についてはモロにそうで、授乳シーンそのものには不快感を覚えていないにも関わらず、授乳プレイなどを好むマニア層にリーチする（かもしれない）という点に危機感を募らせ、それを危険視せよとお触れを出しています。女性的なラインを強調したポージングをする駅乃みちかにはキレる一方で、女性向けアパレルブランド広告に登場するモデルのポーズに対してはイマイチ反応が鈍かったのも同じ理由でしょう。もともとはコンテンツのターゲット層に対する忌避感なのに、コンテンツに対する忌避感であるかのように表現してしまっている訳です。
なぜそんなに回りくどいやり方をするのかはよくわかりませんが、彼ら・彼女らは自我を出すことを徹底的に嫌っている気配がありますので、もしかするとその一環なのかも知れません。けしからん書物を見つけても自分の意志を持って「けしからん」とは言わず、娘が「気持ち悪い」と言ったというクッションを挟んだ上で「（純粋無垢で汚れなき魂を持った）幼い娘が不快感を覚えていることに憤っている」ポーズを取ります。あるいは「欧米では」といった自分が考える上位存在から言葉を降らせます。まあ、そんなこと言われても「ふーん。で？」以外のリアクションは取りようがありませんが。
「男性は女性を守るべき」などの主張からもわかるとおり、彼ら・彼女らは自身が不利益を被る抑圧に対して憤っているだけであり、自身に有益な抑圧に対しては寛容な一面を見せます。例えばヒジャブなどについては妙に好意的な反応を示します。自身の嫌いな露出の多い過激な衣装と比較して、顔以外をすべて隠すという性質に何かしらの魅力を感じているのでしょう。
その大好きなヒジャブも「女性が婚姻関係にない男性からの陵辱から身を守るために必要である」と法解釈されているので、これって逆に言えば「ヒジャブで身を守らないと陵辱される危険性がある」ことに他ならない訳なんですが。その辺り、どうなんですかね（真顔）。
まあ、極論を言えば別段いいと思うんですよ。強い男性に守られたいのも、電車に女性専用車両を用意してもらいたいのも。個人の要望としては。たとえ、女性であることを理由に乗れる車両が制限されても、痴漢と隔離されるのであればそれでいいという話であればわからなくはない。
理解に苦しむのは、そういう欲望を垂れ流していた人間が、仕事と家事の両立がしんどいので家のことをやってくれる人と結婚したいという個人を見かけると、ジェンダーロールだなんだと言いながら噛みつき始めることです。そんなにジェンダーロールに反対なら「強くてたくましい」というロールを男に押し付けるのもやめろ。
結局の所、自分の都合のいいように話を展開するために、それっぽい用語を並べ立てているだけ。一端の綺麗事はいうものの、その綺麗事を現実にするための努力をするつもりなどは更々なく、見据えているゴールも非常に近視眼的かつ即物的。こんな難物をまともに相手するのは素人には無理という理解に落ち着くのでありました。
*1:実際のところ、目につかないようにした店内にまで乗り込んできて「卑猥な画像が！！」ってやりはじめるような輩なので本当に建前だけ
