虚木零児の仮説置き場

虚木零児が他人の行動に仮説を立てるブログ

単純にあなたが嫌われている

虚木零児です。

坂本龍一が何を言いたかったのかは知りようもありませんが、たかが電気、たかが電気と連呼しておいて、語りたかったのは「命の大切さ」なんて言い分が通ると本気で思っているのでしょうか。理解に苦しみますね。

命と電気を比して、命の方が大切だという話は別に構わなくて、「我々の生活は電気によって発展・発達し、今日の便利な生活があるが、そのために背負うリスクとしては大き過ぎるのではないか」ぐらいにしておけばソフトに着地できたものを、わざっわざ「たかが電気」とか言ってしまうの本当に阿呆そのものだし、その現実を直視せずに読み間違っている! で逃げようとするの見苦しいにも程があります。

僕だって人間ですから、音楽家や劇団員といった芸術に纏わる人間が干上がって死にそうという話に同情を覚えない訳ではありません。ただ、このケラ某が餓死するのと、電気にまつわる不安を覚えた町工場の社長が首を吊るのだったら後者に同情するし、後者はどうでもいいという論調を支持する芸能関係者が干上がって死んだ際に、町工場の関係者が「どうでもいい」という反応をしても疑問を覚えないというだけの話です。

周りくどい言い方をやめると、単純に嫌いなんですよ。その下劣な品性が。

……何を言いたいのかわかりませんが、今回のコロナウイルス感染は恐ろしく警戒してもしきれないほどであり、自由な行動どころか、経済活動すらもままならないという非常に危機的な状況です。感染して発症した人々はもちろんのこと、金のめぐりが悪くなっていくことで広範囲の人々の生命が危険に晒されている訳です。多くの人間の生命と比せばあらゆるものが「たかが」と切り捨てられるのは坂本龍一の主張通りのことであり、なれば「たかが音楽」のために命を危険に晒すのはナンセンスと主張するのがスジというものではないのですか。その「命より大切なものなんてない」という主張を翻して「俺たちを助けろ」と喚き出すのは一体どういう神経しているんだという話であります。生命のためには死ぬぐらいの覚悟があるのかと思っておりましたが。

まあ、上には上がいるものなのですが。

oriza.seinendan.org

ぜひ全文読んでほしいんですけども、NHKの記事からの抜き出しが悪質だというのが主張の一つですので、重要な部分だけ抜粋しておきます。

非常に難しいと聞いています。フリーランスへの支援に行政が慣れていないということが露呈してしまったかなと思います。1つには、小さな会社でも「融資を受けなさい」と言われているのですが、まず法人格がないところが多いと。それから、ぜひちょっとお考えいただきたいのは、製造業の場合は、景気が回復してきたら増産してたくさん作ってたくさん売ればいいですよね。でも私たちはそうはいかないんです。客席には数が限られてますから。製造業の場合は、景気が良くなったらたくさんものを作って売ればある程度損失は回復できる。でも私たちはそうはいかない。製造業の支援とは違うスタイルの支援が必要になってきている。観光業も同じですよね。部屋数が決まっているから、コロナ危機から回復したら儲ければいいじゃないかというわけにはいかないんです。批判をするつもりはないですけれども、そういった形のないもの、ソフトを扱う産業に対する支援というのは、まだちょっと行政が慣れていないなと感じます。

この中から「製造業の場合は、景気が回復してきたら増産してたくさん作ってたくさん売ればいいですよね」だけが抜き出されたのは悪意があるという主張です。

主張したかったのは芸術分野への支援が不十分だという話はわからんでもない。製造業のような工業向けの支援と芸術向けの支援は必要な要素が異なり、工業向けの支援は散見されるが、芸術に必要な支援は少ない。という話なら、そういうものかと思わなくもないです。芸術的生業に必要な支援の具体的な話が出てきていないことを除けば。

それを踏まえた上で、今回の主張に対して全く関係のない「お前らは作って売ればいいけど、俺らはそれができないから」をわざわざ差し込んでるから、おかしいっていう話で盛り上がっているんです。だから、その部分がピンポイントで抜き出されるのは全く妥当な話なんですよね。

薄々理解されているとは思いますが、芸術分野に対する不十分だという主張が批判をされているのではなく、主張とは一切関係がない、製造業への当てこすりをわざわざ口にしたことが批判されているんですよ。悪意ある人間が抜粋したのではなく、自身の発言の中に無自覚に紛れていた悪意が炙り出されているというだけの話です。

劇場や稽古場といった固定資産が~発言もそうなんですが、周囲の人間は知性を持たないに違いないという意識が透けて見えます。その癖、簡単に増産して売り出せるなら誰も苦労はしないだろう、ぐらいのことも想像できない程度の頭なのが悲しい。

劇場の客席は増やせないとか嘆いてますけど、今まで開演していなかった時間も公演に回せば、公演1回ごとに客席数分の客を取り入れられることになるので席数を増やすのと同義じゃないですか。キャストを休ませなければいけない? 製造業に携わる人間は休ませなくてもいいとでも思ってんですか? 単純に増やせばいいというもんじゃない? それは製造業も同じかもとは思いもしなかったんですか?

このあたり、ナチュラルに人を見下しているのを感じるし、なおかつ、自覚もしていないんだと思いますよ。

「アシスタントさんは全員、解雇ですよね」っていう発言からも見て取れる通り、漫画家のアシスタントなんて替えの利くパーツだから、いらなくなったら捨てるだろうぐらいの思想が透けて見えるんですよね。漫画なんていわゆる技術や芸の世界なのだから、簡単に換えが見つかるとは限らないだろう。ぐらいの想像力も働かない。アシスタントの生活を維持するために、自分の生活を切り詰めるような漫画家がいるとは思いもしない、育った環境の劣悪さを思わせる素敵なエピソードだと思います。こうなってくると、実際、照明や音響のスタッフは切り捨てられて悲惨なことになっているんだろうな。と邪推するレベル。

演劇の界隈が疲弊していて、なんとか救済を引っ張ってこないといけないのであろうことは推察するものの、そのためにやっていることが「他の業界を腐して、自分たちの困窮さ加減を訴える」や「お前らも同じ目に合えばわかる」という呪詛を撒き散らすことという表現力の貧困さは見るに堪えないものがあります。普段何をしている方なのかは存じ上げませんが、この頭のネジの取れたような言動の数々から鑑みるに、ストーリーに関わる方ではないのでしょうね。

……気の毒な人にムチを打つような真似はいけない。という気持ちにもなりましたが、せっかくなので公開することにします。お世話様です。