虚木零児の仮説置き場

虚木零児が他人の行動に仮説を立てるブログ

e-SportsとJeSUと高額賞金をめぐるゴタゴタ備忘録

虚木零児です。

皆さん、e-Sportsのことはご存知ですか。いわゆるビデオゲームには競技性の高い*1ものが存在し、そのビデオゲームを題材にした大会などが開かれることがあります。有力なプレイヤーたちが自らの持てる技量を尽くして鎬を削る姿は、サッカーや野球といったプロスポーツ同様の娯楽となりつつあります。

まあ、商業規模的には大分盛った主張であることは認めます。

今回はその拡大するe-Sportsにスポットを当てる……はずもなく、その周辺で巻き起こる大会賞金をめぐるゴタゴタについての備忘録となります。

私が把握している範囲での今回のざっくりした経緯はこちら。

  1. 2016年、賞金総額1億円のゲーム大会・闘会議GP2016が開催される
  2. カジノ専門家に補足され、射幸心界隈の観点から法令チェックを浴びる
  3. 2017年、闘会議GP2017の賞金総額が40万円にトーンダウン
  4. 2018年、JeSUが発足。プロゲーマーライセンス発行が始まる
  5. 上記ライセンスによって2項で上がった法令を回避できると説明
  6. ライセンス制度に疑問を抱くももち選手は取得せず*2
  7. 2018年12月、ももち選手の賞金が10万円に減額
  8. 2019年9月、JeSUの法令チェックより賞金授受にライセンスが必須ではないことが明確化(日本eスポーツ連合さん、うっかり自ら「プロ制度は不要」を証明してしまう(木曽崇) - 個人 - Yahoo!ニュース)
  9. 2019年9月、東京ゲームショウ内で開かれた大会でももち選手が優勝するも結局、賞金は10万円相当*3に減額
  10. JeSUに対する批判が加熱
  11. JeSU東京支部局長御自らCAPCOMにタゲ逸し(カジノ合法化に関する100の質問 : 訂正とお詫び:ストファイ大会の賞金減額はカプコンのせい)
  12. 格闘ゲームプレイヤーがJeSU擁護noteを掲載(JeSUと賞金問題について(2019/9/20更新)|勇利(Yuri)|note
  13. 一部、業界人が「冷静なまとめ」とヨイショ
  14. カードゲーム主体の人から消費者庁問い合わせ結果開示note(e-sports大会における賞金授与について消費者庁に問い合わせてみた結果|いた|note)
  15. 格闘ゲームプレイヤー、バックステッポ(指摘を受けての訂正とお詫び、補足等(2019/9/20更新)|勇利(Yuri)|note)
  16. ズームパンチで反撃(海外在住選手への賞金授与について|勇利(Yuri)|note)

なんか、木曽崇氏の回し者みたいになってしまいましたが、それもこれもヤツぐらいしか端的にまとめた記事を見かけなかった所為なんだぜ。もう少し僕に力があれば、独自に調べたりもできたんでしょうな。

さておき、ざっくりと振り返っていくと、e-Sportsと称したゲーム競技大会にて賞金拠出が一般化するも、金の出どころがゲーム会社だった為に景品表示法に違反している*4可能性があると解釈されうるという冷水がぶっかけられ、賞金拠出がトーンダウンしました。これが箇条書きしたところで3項目までに当たります。

この流れを断ち切るべく、新たなスキームで高額賞金の拠出を可能にしようとしたのがJeSUを発端とするプロライセンス制度であり、それに対して「労務者に対する報酬として支払う分には構わないというのは以前からの制度であり、ライセンスの発布は必ずしも必要ではない」という批判が行われていました。これがだいたい箇条書きの7項目ぐらいまで。

この裏では第三者スポンサーからの賞金提供であれば景表法にはかからないことを利用したEvoJapanとかもあったのですが、触れないので割愛してます

で、実際JeSUから問い合わせてみれば「労務の報酬として認められるのなら受領者がライセンスを保有しているか否かは関係ない」といった趣旨の回答が返ってきた為、批判者側の言うとおりの状況だったことが判明したのが8です。まあ、法律が変わっていないんだから、同じところに落ち着くのも道理という気もしますが。

そこから間を開けず、プロライセンス非保有者のももち選手が優勝賞金を受け取れないという事態が発生したため、賞金授受にプロライセンスは必須ではない→でも、ライセンスを持ってないももち選手は受け取れない。という矛盾が生じてしまい、わけがわからないよ状態になりました。

結局、まとめて見れば、元来の「JeSUがプロプレイヤーと認定することで大会参加による賞金受領を労務の報酬と認定してもらえる」という主張はあながち間違いではなかった*5ものの、暗に含まれていた「JeSUからプロと認定されていない人間の賞金受領は労務の報酬と認められない」は明確に否定されてしまった訳です。それを根拠にして規定されていた大会規約が根拠なく書かれているものになってしまいました。まあ、とは言え、事前に大々的に掲示されていた大会規約を数日前に書き換えてそのまま開催したら、それはそれで問題でしょうから、東京ゲームショウでの大会の賞金については致し方のない部分なのだと思いますし、今後は改善されていくことでしょう。

問題はJeSU東京事務局長が「いやー、最終的に決めるのはCAPCOMだしなー」とか言い出したり、会長が強制力はないとか言い出したりし始めたことであり、じゃあなんでお前らは先陣を切って各省庁との橋渡しをして、道筋をつけてやりましたよ! って顔をしてたんだという振る舞いであります。ライセンスにしたって、この人達はゲーム興行に関しては十全たる技能を有していて、彼らに対して仕事の報酬としてお金を支払うことは正当なことなんだ。とお墨付きをつけている訳で「まあ、僕らはそう思ってますけど、なにか問題起きたら開催企業さんで対処してください」ではあまりにも無責任な気がします。今回の件で企業から反発食らっても同情はしませんし、ゲームプレイヤーからボロカス言われても擁護できません。

飛び出してきた格闘ゲームプレイヤーにしてもそうで、"“ライセンス制度”は法的回避を目的にしたものではないということだ。"は個人的には嘘だと思いますし、最大限好意的に解釈したとしても、実態を正確に表しているとは言い難いです。ライセンス制度の発足当時は高額賞金を阻害する各要素をクリアするための方策であると触れ回られていました*6し、「ライセンス非保有者の賞金は10万円」という大会規約もそれが根拠と考えるのが自然でしょう。ライセンスに関する事実を誤認していて*7広報や運用が行われていたのか、それとも必要ないという事実を認識していながら広報活動や運用にて必須であるかのように偽っていたのかは存じ上げませんが、そういう不正確・不誠実な態度を平然と繰り返していることが現在の混乱と批判を招いていると思います。

私がズームパンチだと腐した記事にしてもそうなんですが、弁護士の記事は全文を読めば「景品表示に釣られて国外まで出ていく人間を守る為に、海外企業に日本の景品表示法を適用すること」を否定している*8文章を要約して、それを盾に「日本企業が海外の人間を高額賞金で釣っても(国内消費者の保護観点から)法には触れないんだ!」を主張するのは流石に日本語能力に疑念を抱かずにはいられません。それの補強材料として、直上にある"プロライセンスを保有している場合、大会規定の賞金が支払われる"に疑念を抱かれている大会規約や、特に強制力のないJeSUの、法的にはなんの意味もないプロライセンス規約を根拠として持ってくるのも正直どうかと思います。

JeSU側の人間に求められているのは自分が定めた規約での論理補強ではなく、海外在住の人間が日本渡航中に国内企業が開催した大会に参加した場合や、海外在住の人間が大会で得られる賞金を目的に渡航してきた場合は景表法における景品制限を受けるか否かを確認取って「現時点ではどうやら確からしい」状態にしておくことであって、「聞き方が悪かったんじゃないですか」みたいな推論してる場合ではないと思うのですが。まあ、一プレイヤーにそんな義理はないのが正直な所でしょうし、俺がやるかと言われたらやらないけども、ただ、飛んできた指摘は関係省庁に確認取った上でなのに、お前はネットに挙がってる弁護士の意見だけで覆せると思うんかという話であり、それで実際はダメでした。となった時に被害を受けるのは開催した企業*9なのだから、もう少し慎重になって然るべきなのに。と思う次第です。

業界の今後を考えると、JeSUからライセンス取得しないと授受できない報酬をデカデカと掲示して参加を募ることの是非、とか、法的に必然性のないJeSUライセンスの取得を報酬金を餌にして迫ることの是非、とか、その辺、もろもろクリアしているんだぜ! って所を大々的にアピール*10して、「なんだ、JeSUやるじゃん!」って空気になっていけばいいのにと思います。初っ端の法解釈か広報活動で盛大にすっ転んだのは超絶響くでしょうけど、頑張って挽回してほしいなあ。

なんてね。

*1:技量により優劣がつく

*2:2019/9現在も無取得

*3:ゲーミングモニタ+現金分

*4:高額の賞金をエサにしてゲーム購入、クレジット投入に誘導している

*5:仕事への報酬と理解される一助となる

*6:日経トレンディの記事が消えてるので引用していた記事

*7:当時は必要だと信じていて

*8:しかも、異論があることを認めた上で

*9:強制力のないJeSUの規定に従ったら、当のJeSUからハシゴを外されたことから明らか

*10:もちろん、実態が伴った形で