虚木零児です。
eスポーツに新風登場、今まで頭を悩ませてきた賭博判定を受けない新しいスキームでこれからの大会運営は大きく変わる!
的なリリースが出てるという話だったので見に行ったんですよ。
見ました?
まあ、正直、素人目にもすげえ胡散臭えじゃんってシロモノだったので、絶対にネタにしてやろうって思いながらも、記事としてまとめる時間も気力がなかったんで、後日やろうと放置してしまいました。
で、今日、時間が作れたのでやるかーと思ってアクセスしたんですが……あれ?
読んでくれた人ならわかると思うんですけど、これで賭博に怯える必要はないぜ。みたいな部分ないんですよね。僕が見た時は確かにあったんですけど、今見るとなぜか見当たらない。
もしかして、疑われてます? 嘘じゃないんです。信じてください!
なんか、こんな感じのことを言ってました!
1.事前の参加費ではなく、大会参加「後」の支払いである点
2.支払いが参加プレイヤーの任意である点
3.お金を得る先が、勝敗を争うプレイヤーではなく、主催者である点
実際、ブログ書く前にっ頭の中を整理しておきたいなあと思って、それぞれの項目をコピペしてTwitterのツリーで色々考えてた形跡は残ってるんですよ。3つともどうも穴があるような気がするし、仮に全部合わせても賭博は賭博じゃね? って結論に至っていました。当時。
ちょっとネタ出しhttps://t.co/ESIPYfAKPS
— 虚木零児 (@utsurogi) 2022年4月15日
まあ、消えてしまったものは仕方ないので、諦めます。久々に面白い玩具を見つけたと思ってワクワクしてたんですけどね。残念。
んじゃ、こっちにしましょうか。
賭博罪は、偶然の勝敗に関して財物の得喪を争う場合に成立します。
— Yuki Matsumoto / 弁護士 (@ym_gamelaw) 2022年4月14日
そのため、
・既に結果が判明している
・参加者/視聴者が参加費用を任意でカンパする
スキームであれば、結果に関して財物を賭けているという評価にはなりようがないため、賭博罪は成立しません。 https://t.co/Kgum8P4GEd
……言いたいことはわからないでもないが、にわかには信じられねえんだよなぁ……
ちょっと調べりゃわかることなんですが、賭博と一口に言っても大別すると二種類あるんですね。面倒臭いからウィキペディアから引用するんですけど、
- 賭事(とじ) - 勝負事の結果に参加者が関与できないもの
- 博戯 - 勝負事の結果に参加者が関与できるもの
の2つに区別できる。
例を出すと、競馬みたいな結果を予想して的中者が利益を得るようなのが賭事で、麻雀とか将棋で勝負して結果によって利益が変動するのが博戯って所でしょう。将棋であっても藤井聡太と羽生善治のどっちが勝つかを予想するのは賭事ですし、騎手が参加費払ってからレースして、順位によって分配されるなら博戯でしょうから、将棋だからどっちとか競馬だからどっちとかいう話ではありません。
それに正直、今ってそこまで厳密に区別してないですよね。賭け麻雀って言ってる人がいても特に違和感を覚えたりはしません。全部ひっくるめて、賭博って言うし、博打とも呼ぶし、お上品に賭け事ということもあるでしょう。
というのを踏まえた上で、弁護士(!)先生の言に戻るんですけど、
- 既に結果が判明している
- 参加者/視聴者が参加費用を任意でカンパする
スキームなら賭博、つまりは賭事にも博戯にも当たらないらしい。
考えてみれば、結果が判明している状況では予想のしようがないので、賭事にはならなさそうなのは確かなんですよ。例えば、競馬って予想がある程度、バラけて初めて成り立つじゃないですか。なのに答えがわかってるなら、みんな正解を選ぶのでバラけが生じなくなってしまう。俗に言う「賭けになんねえよ」ってヤツです。
なるほど。確かに賭事としては成立しなさそう。
ただね、賭博って刑法だと「偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為」と定義されているんですよ。それで言うと、参加者同士で偶然の勝敗を決めあって、それぞれの順位なりに応じて得喪が変化する博戯も当然、賭博ですよね。
で、博戯って大事なのは誰がどの結果に滑り込むかなので、精算が結果の後だろうと前だろうと同じことじゃないですか。
例えば、
- 参加費100円をプールして、ゲーム終了時点で一位の人が総取りする
- ゲーム終了後に二位以下が一位の人間に100円を支払うゲーム
があったとして、1.と2.の差ってなんだと思います?
2.の方なら支払いをバックレられる可能性がある。1.には状況を見て参加費の上乗せを要求できたり、不利なら降りれるといったルールを拡張する余地が残っている。みたいな、違いは確かにあるんですけど、それってレート変動の余地があるか、参加費が変動するかっていう言わば、ルールやバリエーションの話でしかない。両方に共通している根っこの部分は何かと言えば「勝てば得するし、負ければ喪する」って所ですよね。
先払いだろうが後払いだろうが「偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為」には違いないと思うんですが、どうなんでしょうか。
支払いが任意っていうのもそうで、負けた人がバックレれば財産上の利益を喪失しないのだから、賭博にならない……とはならんやろうなぁっていう気がするんですよね。
先刻、例に上げた一位に100円払うゲームを五人でやってたとして、そのうちの一人はお金のやり取りをしなかったとします。その人、仮にAさんは一位じゃなくてもお金を払わないし、一位になってもお金を受け取らない。ただ、他の人達はお金のやり取りをしていて、Aさんが受け取らなかったお金は次回取り分としてプールされてゲームが続いていく……という状況だったら賭博にならないと本当に思います?
なんか、Aさんだけ残して、やり取りしてた人たちは全員しょっぴかれました。ってなりそうな気がするんですけど。僕の考え過ぎなんですかね?
さらに言えば賭博罪の構成要件って「得喪を争う」なんですよね。「得喪が生じた」じゃない。これ、全員がプラマイゼロだった場合でも、得喪を争っていたと判断できたときにはちゃんとしょっぴけるように、争うにしてるように見えるんですけど、気の所為なんですかね。
正直、強制じゃなくて「お気持ち」なんで……で徴収したら、0円集まりました。っていう可能性、なくはないと思うんですよね。お気持ちを勝利者への賞金にするつもりだった場合って、原資がないので賞金も0円になってしまうので得が生じません。もちろん、参加者全員1円たりとも払ってないので喪もありません。
結果として、得喪が発生しなかった。
現実的な観点でいくと、賭事にも博戯にも支払いをバックレてよいルールを組み込むと途端に崩壊はするんですよ。負け犬の喪を勝利者の得とするゲームがほとんどなので、喪分が回ってこないと得として渡らなくなってしまう。賭博として遊ぶには何ら面白みがない。負けても損しないけど、勝っても得しないので。
ただ、それってルールの不備の話であって、偶然の勝敗の結果により財物や財産上の利益の得喪を争っていないことの証明とまで言えるんですかね?
参加者から取りっ逸れる前提でスキーム組むなら、最初から参加者からは金を取らないスキームのがよくないですか。そのうえで、視聴者から集めた金を上位勢に分配すれば、参加者は財物や財産上の利益の得はしても喪はしないし、逆に視聴者は財物や財産上の利益の喪はするけど得はしない。視聴者が賭博罪における当事者に含まれるか問題さえクリアできるなら、得喪を争っていないように見えませんかね*1。
冷静に考えたら、費用をカンパしてもらって主催者の懐がうるおいます! っていう話だけで障害があるとすれば、そういうサービスとして商売しちゃ駄目な理由は「賭博に当たる」よりも「こういう形態だと〇〇業に当たるから……」とかじゃないですか。それに賭博の話をしてたのに、主催者の原資から特定プレイヤーに還元するような機能の話も見当たらないし、なんともこう……もんにょりするリリースだなぁというのが正直なところではあります。
*1:視聴者の振りして金を払うことで争うことはできます