虚木零児の仮説置き場

虚木零児が他人の行動に仮説を立てるブログ

面白いとは言ってもらえないゲームの悲惨さ

虚木零児です。

なんか、燃えてたんですよ。

jp.ign.com

そんな大騒ぎするほどのもんか? とは思いますが、平素業界人として振る舞っている連中が烈火の如くキレてて愉快なことになりました。

それただの「つまんねえものに紙面を割くんじゃねえ」って話であって、ページ印刷も必要ないこのWEBの時代に持ち出すのマジでどうなんだろうな。っていう気がしますし、何より、その理論を素直に受け止めると「出来が悪い作品は話題にならず静かに死ぬべき」っていうスパルタンな思想で最高に面白いです。商売でやってんだから売れねえ商品出しながら、自分の名前だけ売れたいなんて許されるわけねえよな。

ホンマか?

で、なんかよくわからんスペースがあって

また、モメた。

別に好きでもないゲームで、好きでもないライターを擁護ってのも、おおよそバカバカしい話なんですけど、ここいらの物言いは引っかかるので意見は残しておきます。

キュレーションについて

そもそもキュレーション・キュレーターとはなにか。

allabout.co.jp

eow.alc.co.jp

原義的には博物館・美術館などで展示会を通じて世に何かを訴えかけたり、あるいはテーマに沿った展示を行ったりを担います。当然、その分野についての専門知識は必要でテーマに沿った作品・保管品をチョイスして見せることが求められます。

ところが、最近はそちらの意味よりも、先に引用した英辞郎で言うところの第3項、必要な情報をたくさんの情報源(特にインターネット上の膨大な情報)から収集、整理、要約、公開(共有)するが優勢です。それただのまとめサイトじゃね? という気がしないでもないですが、結局、あれが流行ったのもこういう潜在的な要求にマッチしていたから、という部分もあるのだと思います。

重要なのはキュレーションとしたときに、テーマについての含意はない、ということです。何らかのコンセプトに従って情報を収集、整理、要約、公開することに過ぎず、テーマ・コンセプトについては本当に様々となっています。例えばこれは美術館で行われた"贋作(Fakes)"の展示。もう終了している様なので悪しからず。

courtauld.ac.uk

結局、日本のゲームまとめサイトみたいなのは、誤報や意図的な誤読、曲解含めた偏向や特定ハードへの煽りでキュレーターとしての価値が落ちて衰退していったように見えていますが、その点でいうと、現在は商業メディアがパブリッシャから来た情報をそのまま載せるだけにとどめているので安心ですね。

こうなってくると、読者からしたキュレーションの役割ってのは「このサイトに来ればひとまず各社の情報・宣伝が見れる」という話に成り下がります。それに慣れているからこそ、キュレーションの役割がある、って言ったんでしょうけど、キュレーションに購買意欲を刺激する義務はないし、仮に他サイトがそういうキュレーションをしてるからと言って、別の人もそれに従わないといけないという義理もないワケです。

極端な話「世間的に評価の低いゲーム」ってコンセプトで情報を集めるのも、キュレーションではあるんですよ。それをどういう意図を持って公開するかも自由。企業の広報活動、広告活動の一種なのはむしろPR記事であって、それについは当該記事中に否定的な話が出てますよね。っていう。

レビューについて

一応念のために言っておくと、レビューとはRe-view (再び、よく見る)から来た言葉な訳で、日本語に直すと再検討、見直し、批評などを意味します。論文の査読、プログラムソースの論評などもこう呼びます。

dictionary.sanseido-publ.co.jp

つまり何かといえば、レビューであるなら、厳しい出来のものには厳しい評価をつけるというのは当然の話で、それに対して売れなければならないのだから、購買意欲を減衰させないために忖度しろ、というのはレビューの原義においては問題であります。それは、他社サイトの記事を「PR記事」と腐しているあたりからも読み取れるはず。そのうえで、PR記事としてでも手放しでは褒められない――つまりは、金を貰っても褒めるのはためらわれる。が評価なんだから、まあ、かなり厳し目の話ではあります。

そもそも、レビュアーも自分の名前を出し、審美眼を賭けててる訳で、面白くもなんともないものを「面白い」って評価したときに落ちるのはゲームの評価にプラスすることの自分の評判。某クロスレビューなんかが金で買われてるって噂を立てられたのも、世間での評判と乖離したことによる評判の低下に端を発する訳で、なんだかんだでライターとして仕事している以上、ページ埋めだけを期待されているにしても、ライターとしてのブランドがあるわけです。それを放り投げろって正直何を言っているんだという話ではあります。

応援がしたいのならレビューではなくPR記事もどきを書け、というつもりなのかも知れないけども、一銭ももらってないので一般的に言うPR記事でないにも関わらず、ヨイショだけした挙げ句に購入者からステマだ! って騒動になった時、お前、このライター守るんだよな? という話になるので一生平行線だと思います。端々に前々から気に入らなかった、みたいな私怨が透けて見えるのでね。

彼らがゲームライターがメーカーとは共犯の関係で、カスタマー相手にきれいな面を見せて不備・不便は隠すべきだとい立場だというのであればそれは良い。あの記事がそれに反しているのは理解する。だが、それを普遍的なものかのように言うのは明らかにおかしいだろ。僕がレビュアーに求めているのはそういうものではない。

当該記事の内容が不適切で、誤りがあり、否定されるべきものなら、その点を持ってライターの不備とすればよい。指摘、批判を持ってライターとしてのポジションを確立するつもりなのだろうが、こういう彼の指摘・批判はこういう機序・論理を持って説明することができ、不当である。でよいじゃないか。

応援について

応援って大雑把に分けると「味方になる」のと「味方や選手を奮い立たせるための行為」があります。大炎上しててんてこ舞いの現場に別の現場から人員が来るのも応援なら、せめてもの差し入れを持ってくるのも応援。もちろん、がんばれーって声を張り上げて鳴り物鳴らすのも応援です。

kotobank.jp

今回の記事が「フレー! フレー!」ってストレートな応援ではないのは明らかで、音頭取って踊りたい人たちが期待していたものじゃないのはわかるんですけど、最低限、本来こんなもんで終わるチームじゃないんですよ、っていう期待は示しているんですよね。よく言えば、叱咤激励。もちろん、悪く言えば罵倒です。

僕、この話題が上がったときからずっと言ってるんですけど、反対派の論旨が「なんでこんな悪口書くんだ」という批判が大半であって「この記事にはこんな嘘が書かれているぞ」とか「ここについては大げさだぞ」っていう査読についての誤りの指摘がほとんどないんですよ。これが答えなんだと思います。

実際、敵を無視できるゲーム性、ジャンプアクションの重要度が高いまで書いてる癖に、攻撃できないかわりに空中でふんばれるフォームのことは「使われないだろう」にしてるのは不思議なんですよね。他にも、出現した敵がステージギミックに巻き込まれて潰されるなんて、愉快な珍道中という物語のフレーバーであろうに、障害物として機能していないことを冷淡に指摘しているとか、ヨッシークラフトワールドではあれだけ大事にしてた世界観を気にする目はどこに行ったんだ、とかね。

それでも、結局、冒頭の記事のライターとしては「なんか世間的に名前が広がっていないから、手放しで褒められるモノではないとはいえ広まってほしい。せめてもの力添えとして記事を書こう」という話ではあります。極端な話をすれば知られることなく終われば、これ以上は広がらない訳で、記事を読んだ100人の内、99人が買わなかったとて、1人でも買ったなら増えてるだけマシという話になります。商売というある種の勝負事の世界で「こんな所で終わるタマじゃないだろう!」って言葉は立派な応援であって「この規模のスタジオならこんなもんじゃないでしょうか」っていうのは毀誉褒貶で言うならむしろ貶だよねっていう。ああ、ここは任天堂に手綱を握ってもらわないと、この程度なんだな。ってなる。

プレイヤーとして他のゲームを押しのけてでも買うほどのものとは言えない。という気持ちと、このゲームの今後のために売れてほしい、買ってほしい。という気持ちは当たり前のように両立する話です。ただ、問題の記事から「メチャクチャ面白いわけではないけど、助けると思って買ってくれ」みたいな気概は感じないので、読者が買ってくれるのを期待するのは流石に無理がある。だからって騙して買わせるのも良心が咎めるし、さりとてネタにしないとこの規模で埋もれてしまう。

つまるところ、この主張に反論するのであれば「このゲームは十分に知名度にある」とか「面白いじゃないか」って話ですよね。「荒削りなんじゃなくてこういうゲーム性」とか。でも、そうではなく「面白くないと思ったゲームの記事を書くな」ってやっちゃうんだから、こいつらこのディベロッパーには期待なんかしてなくて「この程度だろ」とか「ここまでやってりゃ御の字だろ」とかそういう話になりますよね。っていう。

まあ、元々ロクに根拠も示さずに「日本人のネガティブレビューが、パブリッシャーの日本対応を二の足踏ませてる」って書いた奴が含まれてる時点で、ネガティブレビューに対する恨みで動いているという可能性もありますが。流石にないでしょう。

ちなみに、結局、録音を聞くこともせずに書きなぐりだけでここまで来ました。件のネタになったらライターには申し訳ないなという気持ちはあるんですが、曲がりなりにも自分たちで「酷い」って評したものを、聞けとは言えまいと思うので気にせず出します。